書評・感想:敗者のゲーム

本書は資産運用に関する本で、経験のある投資家は一度は読んだことがあると思うし、経験の浅い投資家も遅かれ早かれこの本には遭遇するのではないかと思う。とても有名な本なので、この本で書かれていることや引用されているセンテンスはどこかで目にしたことがあるのではないだろうか。

敗者のゲーム

著者のチャールズ・エリスは米国で投資顧問等で活躍した人であり、CFA協会(米国証券アナリスト協会)の会長を務めたこともある。

著者は運用は「敗者のゲーム」になったと述べている。敗者のゲームとは何か。それは、例えるならアマチュア同士のテニスの試合である。プロテニスプレイヤーの試合では、対戦相手が打ち損じるような鋭い球を放つことでスコアを勝ち取るのに対し、アマチュアの試合では8割の点数は自分または対戦相手がミスをすることによってスコアが入ってしまう。つまり、いかに失敗しないか、が勝負を決めるゲームということになる。

資産運用も敗者のゲームになった、とチャールズ・エリスは主張している。そして、ミスをしない方法はインデックス投資である。機関投資家の運用成績や市場予測の難しさ等を語りながらインデックス投資を勧めている。また、

すべての投資家にとって、投資で成功することは、難しいことではない。成功の秘訣の第一は、ミスター・マーケットの仲間たち、証券会社や投資信託から送られてくる膨大な宣伝広告、ファンドの運用成績、市場見通しの類を一切無視することだ

などと、方々から怒られそうなことをさらっと書いていて、読んでいて目が覚める。

個人投資家のための十戒

インデックス投資を勧めたり、敵を作ったりする以外にも、著者の述べるお金に向き合う姿勢や訓戒は面白いし、心に留めておいて自分が投資に前のめりになりすぎているなと感じる時には思い出したいと思うものがある。例えば、「個人投資家のための十戒」の最初の項目は、

貯蓄すること。そして貯蓄したものを、将来の幸せと安定、子供の教育のために投資すること

と書かれている。残りの9項目は本書を確認されたい。

まとめ

というわけで、単にインデックス投資を勧める本というより、投資やお金に真摯に向き合う姿勢を獲得したり、投資戦略自体を考えるための本という側面が多分にあり、インデックス投資があまり好きでない人も一読したらいかがと思う。

 

 

追記(2022/1/3)

第8版が発売される模様。データが最新に更新されているようです。近々読んでみようかな。